実験音楽曲

久しぶりに実験音楽曲を作った。

耳を痛めて音を自由に出せなくなってから、何となくあった構想を今回まとめてみた。

 

イデアが浮かんだ時は、コレはいける、と思ったのだけど実際詳細を煮詰めて形にしようとすると難しい。色々手を加えると段々と本来の趣旨とずれてくるし、あまりにふんわり設定だとコンセプトの表現に至らない。

こういう事ってどんなモノ作りの場合も共通してあるなぁ、と改めて実感しきり。

 

今回の曲は音量コントロールがテーマ。

音楽の三要素はメロディー、和音、リズム、なんて言われて、基礎的な訓練として音階練習やコード練習、リズム練習はあるのに音量練習ってあまり聞いた事がない。

もちろん自主的にやっている人はいくらでもいるだろうし、打楽器系の練習だとちゃんとやってるかもしれない。

ただ少なくとも、私がやってきたクラシックでは音量のみの練習は無かったし、ロックをやっていた時もどのバンドでも音量コントロールへの意識はあまり高くなかった。もちろん自分も含め。

音量表現のみで音楽は成立するか。

即興音楽を愛するものとして、そんなの成立して当たり前という感覚はあるけど、一度曲という形にしてみたいと思った。(何をもって音楽とするかという議論もあるが、今はさておく)

果たして結果は一体…

 

今回の曲は練習曲の側面もある。

苦手分野克服のための練習曲である。

なので、正直とても難しい。

演奏の機会をいただき、この実験に付き合って下さる全ての方に深く感謝を捧げます。

 

私の曲は20分くらい。

そしてTomさんの曲をやります。

意識を拡張し環境と融合していくような、静謐な作品。

以前野外で同じメンバーで演奏したのだけど、明日は静かな室内での演奏。今度はどのような世界になるかとても楽しみ。

 

ガンバ

前回の続きでヴィオラ・ダ・ガンバについて書きます。
 
 
結論から言うと、ガンバ、買っちゃいました。
 
 
チェロのようなスタイルで弾く古楽器
ガット弦で、弓の反り方がヴァイオリンやチェロとなんか違う。
 
恥ずかしながら、この程度の知識しかなかった。
でもコントラバス奏者のIさんから、サックスのように色々な音程の楽器がある事や、おすすめの演奏動画などを送って頂き、自分でも色々調べてみた。それによるとガット弦だけあって音が柔らかく、ヴァイオリンやチェロよりも音量が小さめだという。
 
ならば好都合、ダメ元でいいからやってみよう!とそれだけの理由で決めた。
 
それが約1年前。
でも楽器がなかなか売っていないので、とりあえず都度楽器を借りてレッスンを受け、楽器の入手は追々考える事にした。
 
レッスンで初めて音を出してみた時。
なんて典雅な響きなんだ、、、と思った。
一瞬で16~17世紀のヨーロッパの空気感が立ち込めた気がした。
16世紀の空気感、知らないですけどね。
音源で聞くとヴァイオリンやチェロに似ていると思ったけど
生で聞くとそれらとは音色も余韻も違う。
指ではじくとギターに似ている。
それもそのはず、ヴァイオリン属とは全く異なる系統の楽器でむしろギターの方が近い楽器であるらしい。
フレットもあり、基本的に4度で一部3度の調弦だ。
 
そのため初心者には手を出しやすい楽器、とどこかに書かれていたし、弓の扱いは自分はまあまあイケるんじゃないかなどと浅はかにも考えていたのだが、、、
 
まあこれが難しい。エライ難しい。めちゃくちゃ難しい。
楽器を構えるのも一苦労、いつまで経っても開放弦すら満足に鳴らせない。
楽器が手元になく練習できないせいもあるが、数か月経ってもまともに弾けず、これじゃああんまりにも意味が無さ過ぎる!と思い何でもいいからとにかく楽器を買おうと決めた。
 
何でもいいから、というのは、ニッチな楽器の為数が少なく入門者モデルでも最低約70万円から、と非常に高価なのだ。
そして中古は滅多に出回らない。
中古が扱われる色んなプラットフォームをずっと見続けたけどなかなか出てこない。
そこで中古は諦め、新品をハンガリーか中国かアメリカの楽器屋から直接取り寄せることにし、色々問い合わせをそつつ、バカ高い輸送コストや関税とにらめっこしてなんとか予算内での入手を目指していた。
 
と、ある時ふとフルート奏者のIさんにガンバを始める時のみんなはどう入手しているのかと聞いてみた。というのもIさんは音大で古楽専攻だったのだ。
 
音大生はまあ富裕層多いので、さくっと買ってたような、、、というア、デスヨネーな回答と共に、
Yオクとか見てみたらどうでしょう?と提案してくれた。
もちろん真っ先にチェックしたけど全然出ないのよ、と言いつつ最近は見てなかったなと思いその場でサイトに行ってみたら・・・なんと今、出てるじゃないか!!!
 
 
その後武者震いと共に入札、そしてオークション終了間際でライバルとの一騎打ちの死闘激闘を乗り越え、先月末、ついに念願の楽器がこの手に・・・!
 
 
 
の、はずが。
 
 
あれ?なんか小さい?ていうか小さい。間違いなく小さい。
 
 
これ、テナーじゃんかーーーーーー!!!(爆発)
 
 
 
説明すると、ヴィオラ・ダ・ガンバには幾つかの音域があり、主なものは低音順にバス、テナー、トレブル(パルドゥシュとも言ったり)で、
ソロ曲はバスがほとんどで大抵の人はまずバスから始める。数も圧倒的に多い。テナーやトレブルは主に合奏時に使用される。単体ではあまり使われない。
私が習っているのはバス。
欲しかったのも、バス。
 
 
 
なんと、ン十万かけて間違い楽器を落札してしまった…
 
 
 
相当トホホで愕然、膝から崩れ落ちたけど、キーが違えど練習にはなる、という事で気を取り直して涙を拭き(嘘)、この楽器と向き合う事にした。
 
その後調整&修理に出して、戻ってきたのが10日前。
 
そして明日、入手記念?にちょっと音を出させてもらおうと思っている。
 
先ほど書いたように、まだ満足に弾けない。弦と弓の鳴り所がつかみきれない。
それを人前で晒すなんて言語道断だと思う。
でも、「弾けない」時は今しかないとも言える。 今後練習するともう二度と「弾けない」には戻れない。
だから今回だけ。
今後数年は門外不出にする。
 
それに奇しくも明日は入手のきっかけをくれたIさんとの共演なのだ。
これも何かのめぐり合わせ、というのは考え過ぎだろうか。

現在地

試した治療法や面白かった検査の事、聞こえの不思議や心境の変化などを順を追って書く予定だけど、その前に現在の事を書く事にする。
 
 
現在の症状は4000ヘルツ付近の音の難聴と、その補充現象としての耳鳴りと聴覚過敏。
この三つの中で演奏を困難にしているのが圧倒的に聴覚過敏で、難聴に関しては日常生活に困るレベルではないし、耳鳴りはかなり酷いけど、それで常にイライラするとか眠れないというわけではない。全然眠れる。
 
で、とにかく厄介なのが聴覚過敏だ。
食器がガチャガチャ触れる音、紙を破く音、救急車、子供の元気な声、賑やかな女性の笑い声。
そして何より、自分の声と自分の楽器の音。
 
全部しんどい。耳をつんざく音に聞こえる。
 
繰り返しになるが、4000㎐付近のみ聴力がダウンしていて、その補充現象の為、私の耳鳴りの音程も4000㎐くらいだし、耳が痛い音も一概には言えないけれど高めの音だ。
 
4000㎐が聞こえずらいのに感覚としては大きく聞こえるという不思議。
脳が無意識のうちに聞こう聞こうと頑張り過ぎているのか。
 
 
(余談だが、この騒音難聴/音響外傷性難聴の事を医学用語でc5dipというそうだ。
特徴である4000㎐付近のみの聴力の低→
4000㎐付近=c5(5番目のc)+ 低下=dipというわけ。
おおおっ、医学と音楽の融合!と、ちょっと楽しい。)
 
さて、症状が落ち着いていても音をうかうか出すとまた悪化する、の繰り返し。
それにこれ以上聴力を落とさないようにするために大切なのは、4000㎐への曝露を極力控える事。
 
なのに耳栓をどんなにぎゅうぎゅう奥まで入れて弾いても、ヴァイオリンやビオラは顎と肩で楽器を挟むから、骨伝導で何ら小さくならずに響いて聞こえてしまう。
むしろ出口を失った音が頭の中で反響してガンガンするくらいだ。
顎の下と肩の間に住宅用の防音資材を挟んだりしたが無駄だった。
脇の下に楽器を挟んで弾く人がいると聞き、自分も試したがそれだと左手が第一ポジションから移動しずらい。
この奏法を練習し続けるのはなんか、、、嫌だ。
でもこれではいつまで経ってもヴァイオリンが弾けないではないか!
 
     
それでもヴァイオリンが弾きたい。 
別にもう対外的な音楽活動ができなくてもなんでもいいけど、ただヴァイオリンが弾きたい。
練習嫌いのクセに、思ってたよりも私はヴァイオリンが好きだったみたいだ。
 
 
顎で挟むのがきついなら、と逆さにして弾いてみた。うん、これはちょっと面白い。
ならばいっそチェロならどうか?と、知り合いのミュージシャンのIさんからチェロを借りて練習してみた。
音程も低いし、音が自分より前に出ていくから良いじゃないか、と。
 
 
結果、チェロという楽器のふくよかさと音の不思議によってアウト。
一番よく聞こえる音は確かに低いけど、含まれた豊かな倍音が、音のうま味が、ふくよかで艶やかな響きが、、、、ビリビリ脳に刺さる。
 
 
そんな中、演奏仲間のコントラバス奏者のIさんから、ヴィオラダ・ガンバというキーワードをもらった。
 
 
そうか、ヴィオラ・ダ・ガンバ、その手があったか!
 
 
 
長くなったので次回に続きます。

経緯

耳を痛めたのは20211月、高田馬場のスタジオ。

サポートで入った古くからの友人バンドの練習の時。

空間を埋め尽くすような轟音の中、クリック(メトロノーム音)と自分の音をマイクで拾って自分のイヤホンに返して弾いた。位置を見失わないようにするためと自分の音を聴くため。

実質演奏時間は一時間半程度だと思うが練習後は聴覚がホワイトアウト、そして徐々に耳鳴りが出て大きくなっていった。

耳鼻科に行って出された診断は騒音性難聴、または音響外傷

その耳鳴りはそのまま今もずっと続いている。

 

何をおいてもどこでもいいからすぐに病院に行き治療を始めるべきだったのだ。

なのに、よくある事だしそのうち収まるだろう、とたかをくくっていた。

しばらくしてこれはマズイぞ思ったが、今日は忙しいし明日は病院が休み、明後日も予定がなどといっている間に発症から1週間経ってしまった。

 

それでは遅過ぎた。

耳の不調を感じたら発症から48時間以内に治療を始める事。

これが予後に大きく影響するそうだ。

 

今でも耳の不調が治らない原因が全て初動の遅れかどうかはわからないけど、鉄は早いうちに打て、ピザは熱いうちに食え。

何事も早めの対処が吉。わかっちゃいるけどね。

 

さて早めに済ませるといいのはライブのお知らせも同じ。

来週11/23(祝水)、越生の山猫軒の演奏会で弾きます。

故 齋藤徹さんの曲をやります。

美しい曲や沁みる曲、カッコいい曲など、本当に良い曲ばかり。弾いていて本当に楽しい。実はちょっと耳への負担は大きいのだけど、練習している時間がこんなに幸せなのも初めて。曲の解釈を巡って意見を出しあい作り上げるのも楽しく、本場当日が来なければいいのに、この時間がずっと続けばいいのに、と思う。

あと9日で来てしまうけれど。

本番が一番幸せな瞬間になりますように…。

 

 

 

 

試運転

久しぶりに人前で音を出す事になった。

 

耳を痛めて演奏を休止してから一年半。意外と短い。気分的には三年くらい引きこもっていたような気分だけど。

 

一年半経ち耳が治ったのかというと、そうでもない。

うっすら良くなっているのかな?という気がしないでもないが、むしろそうでも思わないとやってられないのが実際のところで、結局よくわからない。体調や日々の忙しさ、睡眠、ストレスの度合いなどによって耳の状態が変わるから。

 

じゃあ何で今回演奏する事にしたのかというと、一番の理由は多分、症状に対する慣れ。

 

そして、音楽いいな、バイオリンが弾きたいな、と休んでみて改めてシンプルに思ったから。

 

そして再開するにあたって、耳のこと、音のこと、音楽のこと。他愛もないあれこればかりだけど、備忘録兼ねて書き留めておこうと思ったので、永き眠りについていたこのオワコンなブログをたたき起こし、動かす事にした。  

(なんだかSNSは性に合わないのでね、

これもいつまたストップするかわからないけど。)

 

明日のライブは、演奏再開というよりは試運転といったところだけれど、今やれることを、やれるだけやる。

活動休止の最後の演奏もギターの柳沢さん率いるグループだった。今回その柳沢さんからお誘いが来た時、初めは迷ったけどこういう偶然はトライするべしという事かなと思った。

不安も楽しみも同じくらい。

でも今は感謝が一番大きい。